若年層に関する様々な
トピックスを発信するWEBマガジン

これは世代の違う3人の物語なんですけど、それがまるで１人の人生を描いているかのような繋がりのある話になっていると感じています。梶谷からタクヤに、タクヤからマモルにと、“生きること”を繋げていくというのが本作にとって最も重要なことだと思います。観終わったあとに、少しでも明日を生きてみようかなと思える作品になっているところが見どころです。

オーディションで今回の柿崎マモルという役が決まったんですけど、まずはめちゃくちゃ嬉しかったですし、綾野さん北村さんといった大先輩方とお芝居ができるということに楽しみと緊張が同時に湧いてきたことを覚えています。

台本を読んだ感想でいうと、最初マモルというキャラクターはすごく強い人間だと思っていて、これだけ過酷な境遇にいながらも生きることを諦めていない、生きてさえいればなんでもいいと言えるところに人としての強さを感じました。タクヤから渡されるものをちゃんと受け止める力がある、だから最後の最後で託されるのかなという風に思いましたし、愛情深くて優しいタクヤの後ろには梶谷が存在するんだなというのがずっと見えていました。その繋がりや構成が面白かったですし、ヒューマンドラマを描きながらもサスペンスの要素も入っていて、どんな風に映像になるんだろうと楽しみになりました。

面談形式が多かったんですけど、僕自身がどういう人生を歩んできて、こんな家族構成でという話をした後に、タクヤとマモルが出会う本編のシーンを演じました。台本をいただいてからオーディションまでに時間があったので、自分の中でもマモルというキャラクターをしっかりと組み立ててから挑みましたし、実際オーディションでも手応えもあったので、監督やプロデューサーの方がマモルに合っていると思ってくれたらいいなと祈りながら結果を待っていました。

タクヤみたいな先輩が好きなところです。今までの現場で先輩にすごく恵まれていて、優しくしていただいたり、引っ張っていただいたり、お世話になることが多かったんです。なのでそんな先輩方に憧れますし、僕自身していただいたことをしっかりと受け取ることができる人間だと思っているので、そこはマモルと似ているかなと思います。

さっきマモルは強い人間だという風に言ったんですけど、タクヤと出会って、「生きることってこんなに楽しいんだぞ！」「幸せになってもいいんだぞ！」と教えてもらったことによって逆に弱くなった部分もあったと思います。楽しくなった毎日に「こんなに幸せでいいのかな」と思うようにもなって、タクヤがいなくなった後に、自分の心に元々空いていた穴に気づくというか、そんな心の変化がありました。

今回マモルを演じるに当たって事前に色々なことを調べたり、マモルという人間がどんな経緯で今に至るかというのを結構緻密に組み立てて挑んだので、いざ現場に入ったときにお芝居が固くなってしまったんです。それを解してくれたのが監督であり、プロデューサーさん、そして北村さんで、共通して「あまり力まないでね」というアドバイスをいただいたと思います。自分の思った通りに、タクヤから受け取ったものをそのままお芝居に生かせばいいと教えていただきました。

まずは本当に嬉しかったです。本読みで初めてお会いして、その後はすぐ現場だったので撮影に入る前に一緒に話す時間というのは結構短かったんです。でも撮影が始まると、役の話だったり、僕自身の俳優という仕事についてのアドバイスだったりをたくさんして下さいました。匠海くんから寄り添って下さったことによって僕からも色々聞いてみたり、ご飯に誘ってみたりすることができました。全て快く受け入れてくださいましたし、タクヤとマモルの関係性を撮影以外に過ごした時間で築いていけたと思います。タクヤとマモルとして生きる2人がプライベートの2人にいい関係をもたらして、逆にプライベートの2人の関係性がタクヤとマモルの関係性を見せる上でも生きている、相乗効果のようなものがありました。そんな関係性を作ることができてすごくよかったと思います。

そんなに暗くなっているという感じの現場ではなかったですね。明るい現場を保つという意味で一番影響力があったのは、監督の永田琴さんでした。僕に対してはお母さんのように温かく接してくださり、他の部署の方にも同じような明るさで声をかけられていたので、一見暗くなりがちな作品でも、監督のおかげでとても明るく素敵な雰囲気の中で撮影を進めることができました。周りのスタッフの方々もプロフェッショナルな方ばかりだったので、お芝居しやすい環境というのを丁寧に作ってくださって、本当にありがたかったです。

タクヤとマモルや、タクヤと梶谷が一緒にご飯を食べているシーンがすごく好きで印象に残っています。誰かとご飯を一緒に食べることや、人にご飯を食べさせるということってすなわち“生きること”に直結すると思うんです。ご飯を与えるということは「お前生きろよ！」というメッセージに繋がっていると思うので、それがちゃんと映像からも伝わってきますし、梶谷からタクヤへ、タクヤからマモルへとこうして受け継がれてきたんだなと感じることができてお気に入りのシーンになっています。

タクヤとマモルが歌舞伎町で遊んで歩き回っているシーンは、普段あんなに歌舞伎町で暴れられることはないので新鮮で印象に残っています。仕事だからこそ体験できる楽しさといいますか、2人でドキドキしながら缶蹴りをしたり、待ち時間にお喋りをしている2人の空気感のままで役に入ったり、今考えるとすごくいい環境だったなと思います。

今の時代はＳＮＳを通して色々な人のキラキラした一面が見られて、それはすごく楽しいことですし、自分から発信していくというのも日常を豊かにする一つの方法だと思います。でも、それによって「自分はこうあらなきゃいけない」「自分が生きることに大きな意義を見出さないといけない」みたいに思い詰めてしまう若い人が多くなっている気がしています。実際そんなことはないですし、周りを見渡せば自分を支えてくれる人はきっとたくさんいるし、たとえ一人だったとしてもそういう人がいてくれるのならばそれは十分生きる理由になると思うんです。だから、人と比較した自分や、生きることついてあまり考え過ぎないでほしいなと思います。