Z世代の日常に浸透する「恋リア」の魅力とは?
近年、日本では数多くの恋愛リアリティーショーが配信され、なかには大人気シリーズとして定着している作品や、韓国版のリメイクとして新たに制作される作品も増えています。
恋愛リアリティーショー、通称”恋リア”の視聴者層は、主にZ世代と言われています。では、なぜZ世代は映画やドラマではなく恋リアにハマるのでしょうか。
今回は、近年話題になった作品を例に挙げながら、Z世代が感じている恋リアの魅力を分析してみました。
日韓共に大人気シリーズ『乗り換え恋愛』

2021年に韓国で配信された『乗り換え恋愛』は、2023年に日本版『ラブトランジット』としてリメイクされました。現在までに日韓それぞれ4作が制作されている人気シリーズです。(『ラブトランジット』シリーズ4は参加者全員が35歳以上の『ラブトランジット+35』)
交際期間や破局理由がそれぞれ異なる元カップルが、約1か月の共同生活を送る本作。元恋人(通称”X”)と復縁するのか、それとも新しい恋に進むのかという、共同生活のなかで揺れ動く恋愛模様が大きな見どころです。さらに、X同士は番組の進行とともに徐々に明かされていくため、出演者の行動や距離感から「この2人が元恋人なのでは?」と考察する楽しさもあります。
なかでも魅力的なのは、かつて恋人同士だった2人だからこそ生まれる、複雑な感情です。過去の思い出を振り返ることで初めて気づく未練や、元恋人が新しい恋に進もうとする姿を見て感じる嫉妬。実際に存在した”恋人だった時間”が物語の土台になっているからこそ、数ある恋リアのなかでも特に共感性や没入感が高い作品だと感じます。
さらに、番組をきっかけに復縁したカップルが結婚したり、番組内で乗り換え成立したカップルがその後も公開恋愛を続けたりするなど、コンテンツの枠を超えた、その後のリアルを見ることができるのも大きな魅力です。
世界各国で人気爆発!『ラヴ上等』

タレント・MEGUMIがプロデュースする『ラヴ上等』は、元暴走族や少年院経験者など、いわゆる”ヤンキー”の男女が繰り広げる日本の恋愛リアリティーショーです。
2025年12月にシーズン1が配信されましたが、あまりの人気の高さに、2026年8月には異例のスピードでシーズン2が配信。ティザービジュアルが解禁された当初は、出演者たちの個性的なビジュアルやヤンキーによる恋リアという斬新さから、否定的な意見も少なくありませんでした。しかし、配信が始まると状況は一変。恋愛だけにとどまらない人間ドラマや、出演者たちが作り出す独特の『ラヴ上等』ワールドにハマる若者が続出しました。その人気は日本国内にとどまらず、海外でも注目を集めています。特に韓国では、かねてからのギャル人気が再燃するかのような盛り上がりを見せました。シーズン1の熱が冷めやらぬなか、約8ヵ月という短い期間でシーズン2の配信がスタート。SNSを中心に連日話題となっています。
本作の魅力は、非日常的な空間で巻き起こる濃密な人間ドラマと、出演者たちがそれぞれの過去を乗り越えていく姿にあるのではないかと考察します。複雑な家庭環境で育った経験や、恋人との関係で傷ついた経験など、それぞれが抱えてきた痛みを出演者同士がさらけ出し、ときには過去を清算しながら、新たな気持ちで人生を歩み始めていく。普段の生活ではなかなか触れることのない世界だからこそ興味をそそられ、より情熱的な恋愛や人間関係から目が離せなくなるのだと思います。
美男美女が勢揃い『脱出おひとり島』

Netflixの恋愛リアリティーショーのなかでも、長く人気を誇る韓国の恋愛リアリティーショー『脱出おひとり島』。
本作は、無人島に集まった男女が8日間の共同生活を送り、カップルとして島から脱出することを目指す、刺激的な恋愛プログラムです。
この恋リアの魅力は、何と言っても圧倒的なビジュアルの強さです。スタイルやルックスに優れ、自信に満ちた男女が集まり、積極的に恋愛を繰り広げる姿は、ほかの恋リアとはまた違った魅力があります。デートをかけて行われるゲームでは、同性同士の真剣勝負や、男女の距離を縮めるドキドキする展開が繰り広げられ、恋愛以外の部分でも楽しむことができます。
また、韓国のアイドルやドラマなど、韓国カルチャーの人気が続く日本では、恋愛模様だけでなく、出演者のファッションやメイク、ヘアスタイルなどを楽しむ視聴者も多いでしょう。推しを見つけたり、自分のファッションや美容のロールモデルを探したりすることも、本作の楽しみ方のひとつなのかもしれません。
日本の恋リアで例えるなら、『シャッフルアイランド』に近い魅力を持つ韓国恋リアとも言えそうです。
恋リアの魅力①スマホで短時間で楽しめる気軽さ
最近、Z世代を中心に使われる言葉のひとつに「ドパガキ」があります。「ドーパミン中毒のガキ」を略した造語で、短時間で強い刺激や快感を得られるコンテンツを好む若者を指す言葉として使われています。例えば、映画やドラマを倍速で視聴したり、お風呂やトイレなどの短い時間にもスマホで動画を見たりするなど、SNS時代ならではのコンテンツ消費のスタイルを表した言葉です。TikTokやYouTube Shorts、オンラインゲームなど、短時間で刺激を得られるコンテンツが身近になったことで、若者の”スキマ時間の過ごし方”も変化しています。
そんな現代の視聴スタイルと相性がいいのが、恋リアなのではないでしょうか。
比較的短い時間で展開が進み、倍速再生や部分的な視聴でも大まかな状況を把握しやすい作品も多いため、食事中や移動中、入浴後などのスキマ時間にも楽しむことができます。”まとまった時間を確保して作品を最初から最後まで見る”というよりも、日常生活の隙間に入り込むコンテンツとして、恋リアは現代のスマホ視聴と非常に相性が良いと言えそうです。
恋リアの魅力②見ず知らずの人だからこそ、自分事に落とし込んで楽しめる
恋リアに出演するのは、一般人やインフルエンサーとして活動する人など、映画やドラマの俳優ほど知名度が高くない人も多くいます。そのため、視聴者の多くにとって出演者は初めて知る人。すでにイメージが確立されている芸能人ではないからこそ、先入観を持たずに恋愛や人間関係を見ることができ、ときには自分自身の経験と重ね合わせながら楽しめるのではないでしょうか。
特に韓国で人気を集め、日本版も制作された『乗り換え恋愛』や『ラブトランジット』は、実際に交際していた元恋人同士が参加する恋リアです。たとえ現在はインフルエンサーや俳優として活動している出演者であっても、過去に恋人と過ごした時間や思い出が本物であることに変わりはありません。写真や動画を通して過去の恋愛を振り返る姿を見ていると、「自分にもこんな経験があった」と、自分自身の恋愛と重ね合わせてしまうこともあるでしょう。
また、番組を通して、推しの出演者を見つけたり、応援したいカップルを見つけたりするのも、恋リアならではの楽しみ方です。
恋リアの魅力③創作された映像作品では味わえない”リアル”
恋リアの最大の魅力とも言えるのが、映画やドラマとは異なる”リアルさ”です。
映画やドラマには脚本や演出があり、役者が登場人物を演じています。一方、恋リアでは、少なくとも出演者自身の感情や人間関係をベースにしたリアルなやり取りを見ることができます。一部では「恋リアにも台本がある」「演出されているのでは?」という声があるのも事実です。しかし、日常的にカメラが回っている環境での何気ない行動や、相手に対する言葉遣い、距離の縮め方などから、人間関係について考えさせられる場面は少なくありません。例えば、共同生活のなかで喧嘩が起きたとき、「こういう発言や行動は相手を不快にさせるのか…」と気づくことがあります。反対に、初対面の相手との距離の縮め方が上手な出演者を見て、「こういうコミュニケーションの取り方なら仲良くなりやすいんだな。」と学ぶこともできるでしょう。
つまり、恋リアは恋愛だけではなく、人と人とのコミュニケーションを観察するコンテンツとしても楽しめるのです。
近年、MBTIやラブタイプなどを使って、人の性格や恋愛傾向を分析・分類することが若者の間で人気になったことも、こうした人間観察への関心の高さと無関係ではないのかもしれません。恋愛リアリティーショーを、単純に”他人の恋愛を見る番組”として楽しむだけではなく、出演者それぞれの性格や価値観、人間関係の変化を観察する”人間ドラマ”として見ている人も多いのではないでしょうか。
まとめ
近年、日本で人気を集めている恋リアを分析してみると、そこには”他人の恋愛を見る”という楽しみ方だけではない、さまざまな魅力があることが分かります。自分自身の過去の恋愛と重ね合わせて涙を流したり、出演者の人間関係から新たな気づきを得たり、友人同士で恋愛観や価値観を語り合うきっかけになったり。恋リアは、単なる恋愛コンテンツではなく、恋愛、ファッション、美容、人間関係、自己分析など、さまざまな要素を含んだコンテンツへと進化しています。
そして、スマホでスキマ時間に楽しめる手軽さも相まって、Z世代の日常に自然と入り込んでいるのではないでしょうか。
まだ恋リアを見たことがない人でも、作品によってテイストは大きく異なるため、まずは気になる番組をひとつ見てみるのがおすすめです。恋愛だけではない、それぞれの”推しポイント”を見つけながら、自分に合ったお気に入りの恋リアを探してみてください!