
2026.03.30

毎週月曜日にお届けする連載企画【YOUTHClip CINEMA GUIDE】今週の映画セレクション。
本コーナーでは、現役大学生で構成されたYOUTHClip編集部員が、いま観てほしいおすすめ映画をセレクトし、紹介します。
今回取り上げるのは、今週の3月27日に公開された映画『90メートル』。
難病を患ったシングルマザーの母と、人生の岐路に立つ高校3年生の息子の姿を通して、親子の絆と家族の愛が書き出されている感動の物語です。
1.キャストスタッフ&ストーリー
2.新進監督中川駿の実体験から生まれるリアルな物語
3.母を支える高校生が抱える「進路」という課題
4.だからZ世代に届けたい
西野七瀬/南琴奈/田中偉登
監督・脚本:中川駿
配給:クロックワークス
小学生の頃からバスケットボール一筋だった佑。
母・美咲が難病を患ったことで、母子家庭で育った佑は高校2年のときにバスケを辞め、美咲の世話を優先せざるを得なくなる。ヘルパーの支援はあるものの24時間体制ではないため、佑が美咲のケアをしながら家事をこなす日々を送っていた。高校3年生になった今、東京の大学に進学したい気持ちはあるが、美咲を一人にするわけにはいかず、常に手元にある呼び出しチャイムの音が、佑の心を引き留める。その看病が一生続くかのように、自分の夢や希望はすべて諦めかけていたが、担任の先生から自己推薦での受験を勧められる。しかし、日に日に身体の自由を失っていく美咲の姿を見ると、上京したい気持ちを打ち明けられずにいた。
そんなある日、介護施設のケアマネジャー・下村からヘルパーの増員により24時間ケアの体制が整ったことを告げられる。我が子の明るい未来を願う美咲は「お母さん、大丈夫だから。好きなようにしていいからね」と優しく声をかけるが──。
本作の監督は、『少女は卒業しない』『か()く()し()ご()と』で独自の人間ドラマを描き若者の心情をリアルに切り取ってきた中川駿。本作では自身初となる完全オリジナル脚本に挑戦しています。母親を看病した自身の経験をもとに制作された、半自伝的な物語となっています。リアリティのある描写と繊細な感情表現によって、どこか私小説のような生々しさと温度を持ち、観る者の心に深く響きます。
日常の何気ない会話や沈黙の中に込められた感情を丁寧にすくい上げる演出は、本作でも健在。派手な展開に頼るのではなく、現実にありそうな出来事の積み重ねによって、親子の関係性や「家族とは何か」という普遍的なテーマを静かに、しかし確かに問いかけてきます。
さらに、主演には今注目の若手俳優・山時聡真、母親役に実力派の菅野美穂、そしてケアマネジャー役として西野七瀬が出演。世代もキャリアも異なる俳優陣が、それぞれの立場から役に深みを与え、物語に説得力と厚みをもたらしています。
物語の主人公は、高校3年生の藤村佑。幼いころからバスケットボールに打ち込んできましたが、母が難病を患ったことをきっかけに部活を辞め、家事や介護を担う生活を送っています。そんな中、担任から大学の自己推薦入試を勧められ、将来について考えることになります。
慣れない家事、終わりの見えない看病、そして徐々に失われていく“自分の時間”。そんな中で、担任から大学の自己推薦入試を勧められ、佑は改めて自分の将来と向き合うことになります。
東京の大学に進学したいという夢はある。しかし、その一歩を踏み出すことで、母を一人残してしまうかもしれない。夢を追うことと、家族を支えること。そのどちらも簡単には手放せないからこそ、佑は決断できずに揺れ続けます。
本作の魅力は、そんな「どちらかを選ぶことの痛み」を、過度にドラマチックにすることなく、あくまで現実的な視点で描いている点にあります。誰にでも起こりうる選択だからこそ、観る側もまた、自分自身の問題として引き寄せてしまうはずです。
映画『90メートル』は、親の介護や進路の悩みといった一見重く感じられるテーマを扱いながらも、今を生きる若者のリアルな葛藤を丁寧に描いています。主人公は高校3年生。夢や将来を考える時期に、家族の事情という現実と向き合わなければならない状況に置かれます。
進学や就職など、人生の選択が増えていくZ世代にとって、「自分の夢を優先するべきか、それとも大切な人のために何かを我慢するべきか」という悩みは決して他人事ではありません。誰かを思う気持ちと、自分の人生を歩みたいという思い。そのどちらも大切だからこそ揺れ動く心が、この映画にはリアルに映し出されています。
Tel:03-6712-5946
記事:川村柚月