【YOUTHClip CINEMA GUIDE vol.16】今週の映画セレクション/『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』
毎週月曜日にお届けする連載企画【YOUTHClip CINEMA GUIDE】今週の映画セレクション。
本コーナーでは、現役大学生で構成されたYOUTHClip編集部員が、いま観てほしいおすすめ映画をセレクトし、紹介します。
今回取り上げるのは、今年の夏に続編である『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』の公開を控え、若い世代を中心に大ヒットを記録した映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』です。
目次
1.キャストスタッフ&ストーリー
2.戦争という非日常を自分事として考えるために
3.“今”をどう生きるかを考えさせる物語
4.だからZ世代に届けたい
1.キャストスタッフ&ストーリー

キャスト:福原遥 水上恒司
伊藤健太郎 嶋崎斗亜 上川周作 小野塚勇人 出口夏希 坪倉由幸 松坂慶子
原作:汐見夏衛
監督:成田洋一
脚本:山浦雅大 成田洋一
配給:松竹
◇ストーリー
親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの高校生の百合(福原遥)。
ある日、進路をめぐって母親の幸恵(中嶋朋子)とぶつかり家出をし、近所の防空壕跡に逃げ込むが、朝目が覚めるとそこは1945年の6月…戦時中の日本だった。
偶然通りかかった彰(水上恒司)に助けられ、軍の指定食堂に連れていかれる百合。そこで女将のツル(松坂慶子)や勤労学生の千代(出口夏希)、石丸(伊藤健太郎)、板倉(嶋﨑斗亜)、寺岡(上川周作)、加藤(小野塚勇人)たちと出会い、日々を過ごす中で、彰に何度も助けられ、その誠実さや優しさにどんどん惹かれていく百合。
だが彰は特攻隊員で、程なく命がけで戦地に飛ぶ運命だった。
2. 戦争という非日常を自分事として考えるために
本作は1945年6月、戦時中の日本を舞台に、現役高校生の百合がタイムスリップし、特攻隊員の彰と出会う物語です。
戦争という題材はどうしても現代の私たちにとって自分事にしづらく、さらにタイムスリップという設定もあって、とっかかりにくさを感じる方もいるかもしれません。それでも本作は、戦争の現実を伝えるだけでなく、限られた時間の中で生きる人たちの人間関係や、さまざまな恋愛のかたちが描かれている点に魅力があります。相手のために気持ちを抑えたり、一緒にいられないと分かっていながら想いを伝えたりといった葛藤は、現代にも通じるものではないでしょうか。今は平和な日常が当たり前になっていますが、「人はいつ死ぬか分からない」という前提自体は、どの時代でも変わらないのです。だからこそ本作は、戦争という出来事だけでなく、人と人の想いや関係に目を向ける作品として受け取ることができます。
3. “今”をどう生きるかを考えさせる物語
本作は戦時中の物語でありながら、最終的には”今をどう生きるか”という視点に繋がっていきます。
現代から来た百合は、最初こそ戦時中の価値観や環境に戸惑いながらも、彰をはじめとする人たちと関わる中で、少しずつ自分の考えや向き合い方を変えていきます。当たり前に明日が来ると思っていた日常や、言わなくても伝わると思っていた気持ちが、決してそうではないと気づいていく過程は、今を生きる私たちにも重なる部分があります。何気ない日常や、人との関係、言葉にすることの大切さ。そういったものを改めて考えるきっかけになる点も、この作品の魅力の一つです。
4.だからZ世代に届けたい
日本では、戦争を題材とした作品が数多く制作されていますが、一方で、実際にその惨劇を経験していない世代が描くことに対して、複雑な思いを抱く人がいるのも事実です。それでも、映画という表現の中にはさまざまな形があっていいはずだと考え、本作のように、今を生きる若者に命の尊さや想いを伝えられることの大切さを届ける作品には、確かな価値があると感じます。もちろん、戦争という題材を扱う以上、慎重に描く必要があります。だからこそ、その重みとどう向き合い、物語として昇華していくのかは、映画やドラマにおける大きな課題であり続けるでしょう。そのなかでも本作は、Z世代にとっても“自分ごと”として受け止められるきっかけを与えてくれる作品として多くの気づきをもたらしてくれるはずです。
Tel:03-6712-5946
記事:根市涼花