第1回となる今回のゲストは、株式会社keypoint代表取締役社長・松本季依
今年の3月に大学を卒業をしたばかりの彼女は、大学卒業の2ヶ月前にアイドルプロデュース会社「株式会社keypoint」を設立。現在は会社を経営する傍ら、メンズアイドルグループ「Animal☆Collection」、「Repalette」のプロデューサーを努める。今回は彼女がどういった経緯で会社設立に至ったのか、彼女自身が考える地下アイドルの魅力についてなど沢山お話を聞いてきました。
株式会社keypoint代表取締役社長の松本季依です。現在はメンズアイドルグループ「Animal☆Collection」と「Repalette」のプロデューサーをしています。他、アイドル「Lapilaz」のコンサルをしています。
-現在社長をやられていると思うのですが、大学時代にはどういったことを学び、どういった経緯で会社設立に至ったのでしょうか?
私は高知県出身なので、高校までは高知にいました。そこからお茶の水女子大学に進学が決まり上京して来ました。
人前に出ることが好きだったので、大学1年生の頃は自らアイドルのような活動をして、大学2年生の頃は大学のミスコン出場を経験しました。でも私は女の子のアイドル寿命って早いと考えていて、そう考えた時に自分のアイドル寿命を感じたんです。それならアイドルプロデュースをする側に回ろうと思い、LVSにインターン生として入りアイドル運営のお仕事をさせて頂くことになりました。
入ってまずさせて頂いたお仕事が、女性アイドルのマネージャーでした。その後、元々自身の希望で決まっていた中国留学に行くことになりました。その期間はマネジメントから離れ、日本帰国後に再度アイドル運営に戻りました。
戻ってきた後はメンズアイドルの担当を任され、アイドルプロデューサーとして動いていました。留学を挟んだので大学は1年留年したのですが、大学3年生から大学5年生まではずっとLVSでインターンをしていました。
-そもそもなぜ中国に留学しようと?
アイドルとは関係ないのですが、大学に入ってから「大学卒という学歴のためにみんな大学に行っている人が多い」と気がついたんです。私は学費を無駄にはしたくなかったので、「大学に行って〇〇が得られたよ」というものが欲しかったんです。進学した学科は、語学と文化学を学ぶ言語文化学科の中国圏専攻でした。どうせなら中国語を取得して卒業したいという気持ちがあったので、中国語取得のために留学を決意しました。
-なぜ中国圏専攻の学部に進学しようと?
高校時代進路に迷っている時に、たまたまテレビで台湾特集をしていたんです。
「台湾めちゃいいところじゃん!台湾に住んだら楽しそう。中国語だよね?勉強しよ!」っていう軽い感じで(笑)。
それで中国圏専攻の学部に進学を決めました(笑)
-ご自身でもアイドルの寿命を感じたとおっしゃていましたが、何か出来事があったのでしょうか?
単純に売れなかったんです。その時にこれを続けてても意味がないと気づいて、自分が前に出てやるよりかは、
「実際に私がコンセプトなどを決めて、自分よりも可能性のある子をプロデュースしたほうが売れるのでは」と思い、
裏方に回りました。反面教師的な感じで思ったのがきっかけですかね!
とにかく私自身が売れても売れなくても、”メンズアイドルの現場”というものが凄く好きだったんです。
「演者を辞めてもその業界に関わり続けられる仕事ってなんだろう?」と考え行動していたら、自然とプロデューサーになっていましたね。
-その業界がシンプルにとても好きだったんですね。大学からインターンもされてたとのことですが、そこから会社設立までの経緯を教えてください。
留学から帰ってきて、初めて本格的にメンズアイドルのプロデュースを任せてもらえるようになり、その時に上司の期待以上の売上を叩き出してしまったんです。元々LVSはモデル事業部、アイドル事業部という棲み分けがなかったのですが、実績を上げたことでアイドル事業部ができ、そこの部長を任せていただけるようになりました。
「このままグループを複数作ったとしても上手く行くのではないか」というところで、アイドルグループをたくさん作っていくならアイドル会社を設立した方がいいと思い、今年の1月に株式会社Keypiointを設立、代表取締役社長に就任しました。
-周囲が企業に就職する中で不安はありましたか?
もちろんありました。就活…本当にキツかったですね。就職活動を始めたのも大学4年の3月で、何も対策をせずに大手しか受けていなかったので、落ちまくっていたんです。その時期は「人生終わったわ…詰んだ」と思っていましたね。
その期間、富士急ハイランドに行く機会があったんですが、ジェットコースターに乗った時は、「これで死んでも大丈夫だ…」とか思いながら乗っていたので全然怖くなかったりして(笑)振り返ってみると、私どの面接も必ず「私アイドルプロデューサーになりたいです!」と言っていて、今考えたらそんな子取らないよなって思う部分はありますね(笑)
しかし大手を受けていた理由というのも、将来的にはアイドルプロデュースをしながらアイドル会社を設立したいという夢があって、そのためのコネクションや実績、肩書作りのためだったので、結果的には就活失敗してよかったなって思っています(笑)
-話していて感じたのですが、松本さんは失敗して落ち込んでもあまり引きずらないタイプですか?
そうですね。基本的に負けず嫌いですし、とてもポジティブなので、「どうにかなるだろう」と思って生きています。
悩んで沈んだらとことん沈みます。でも深く考えないです。一時的な感情は我慢しちゃえばすぐ解決するので。その感情がビジネスに影響するとなった時は対策を考えると思うんですが。とりあえずお酒が飲めていたら毎日幸せなので!本当にとにかく「アイドルが好き」って理由だけでここまで進んできたんですよね。
私自身が活動していたのもそうですが、私の先輩アイドルがZepp DiverCityでワンマンを成功させたんです。
それを観に行ってより感動して感化されたのが大きいです。ライブアイドルのパフォーマンスとファンの声援が一体になるあの瞬間がすごく好きなんです。だからこそ、「Animal☆Collection」と「Repalette」が渋谷WOMBでワンマンライブを成功させた時は「あ、私が好きだなと思った空間が自分の手で作り出せている」と感じてとても気持ちよかったですし、自分が作ったもので人が喜んでもらえたことが単純に嬉しかったです。
私、ファンのツイッターを結構自分でも見たりするんですが、「楽しかった」「このグループ好き」って言って貰えていると、「嬉しいな、やりがいあるな」ってすごく思いますね。
株式会社keypointはアイドルグループをプロデュースしてマネジメントする会社です。
今後のビジョンは「メンズに限らずグループを増やして行くこと」です。最終的な目標は、「業界無双」。
「メンズライブアイドルって言えばkeypointだよね」って言われる会社を目指します。
-現在社員は何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか?
今はインターンも合わせて4人います。一番年上の人で29歳ですね。
-部下は松本さんよりも全員年上ですが、組織マネジメントで気をつけている事を教えてください。
部下が年上だからこそ私より社会人経験が長いので、部下の意見は積極的に取り入れることにしています。
私だけの判断で全部を決めてしまうのはまだ不安な部分もありますし、社会人経験が私より長い先輩らだからこそ、アドバイスや意見は聞くようにしています。
また、年上の部下でも期日やルールを守らないなど、社会人としておかしいと思うことがあれば、それは間違っていると伝えるように心がけています。
ライブアイドルの良さは、”ファンと演者の距離の近さ”だと思っています。
マスメディアを中心に活動するアイドルは認知してもらえない、話せないことが多いと思うのですが、ライブアイドルだと認知してもらえますし、メンバー側もファンからの愛を直に感じ取りながら成長していくのでその過程が観ていて面白いんです。なので、ライブアイドルの魅力は「ファンと近くでコミュニケーションを取りながら一緒に成長していく」この過程だと思います。
-ファンも推し甲斐がありそうですね。
そうなんですよ。ライブアイドルのファンって、一般のインフルエンサーのファンよりもかなり熱量が高いので、例えばイベントや舞台などに地下アイドルが出演した場合、集客率も凄くいいんですよね。
-「Animal☆Collection」-
コンセプトは「あなたのペット」。赤:犬担当、青:猫担当、黄色:ハムスター担当、白:兎担当、緑:鳥担当といった、メンバーごとに担当カラー&動物と振り分けていて、楽曲も動物っぽいものを入れています。盛り上がりを最重視した可愛い系のグループです。
目標はZeppでのワンマンライブですね。デビュー3ヶ月で渋谷WOMBでライブを成功させました。9月にはVeats Shibuyaでセカンドワンマンが決まっています。メンバーと話し、ワンマンを定期的にやって徐々にハコを大きくし、2年後のZeppワンマンを目指します。
-「Repalette」-
コンセプトは「僕たちのサクセスストーリー」。ファンと一緒に成長して大きな舞台を目指していくといった感じです。みんなアイドル未経験で頑張り屋さんなんです。なので成長の過程を楽しんでもらえたらなと思っています。”成長”が大きなコンセプトになるので、曲は「諦めない、夢に向かって頑張る」といった歌詞が多いですね。こちらも12月に2ndワンマンライブが決定しており、2年後Zeppに立つことを目標に頑張ってます。
-メンバーはどういった方法で集めるのでしょうか?
インスタで声を掛けさせて貰い、いいなと思った人を採用するといった感じです。特に面接の際に重視している部分は、「人としてしっかりしているか」。「ビジュアルや歌・ダンスのセンス」はもちろんなのですが、それ以外の部分で「人柄やちゃんと挨拶が出来るか」が重要だと思っています。どんなにイケメンでもタメ口を使って来たり、挨拶が出来なかったり、コミュニケーションが苦手な子は採用しないようにしています。
メンバーとして入ってくれた子達は元々アイドルをする意志はなかったと思うんですが、説明した上で「面白そうやりたい」と言ってくれた子が多いです。あとはジャニーズが好きだったり、素直にしっかりと自分がなりたいアイドル像を持って真面目に取り組んでいて、後々は俳優やモデルもやっていきたいと言う子も多いですね。
-アイドルグループを2組もプロデュースされているじゃないですか。経営を視野に入れながらメンバーのケアもしなくてはいけないと思いますが、その点はいかがですか?
そうですね。アイドルが好きなので苦には感じていません。たまにメンバーを叱ることはありますが、怒ったり辛いことがあっても基本酒を飲めばすぐ忘れるタイプなので(笑)でも代表という立場になったことで、メンバーや社員の人生を預かっているという”責任感”は出てきましたね。
-プロデュースをしていて大変だなと感じることはありますか?
グループデビューをして1ヶ月か2ヶ月目に予想外の大赤字を叩き出してしまって…ガチで消えようかなと思いました(笑)本当に辛かったです。
アイドルを私自身がちゃんと売ってあげないと、演者は食べて行けないですし、「こういう状態なら辞めたい」と言われたこともあったんです。
「この状態ではマズイ」と思いました。具体的な策として、集客を増やすことにフォーカスしました。演者には地道にビラ配りや路上ライブをさせるといった「集客を増やす施策」をたくさん考えて実行していきました。結果として、最近ようやく動員が安定してきたと言った感じです。
私は「一生好きなことをして生きていきたい」という思いで起業しました。起業を目指す人は自分が好きと思うものに対して貪欲にいろいろ挑戦して欲しいです。好きなことを仕事にすることは、それに至る前にたくさんの苦労もあるのでその覚悟をすることも大切なのかなと思います。また、「やりたいことがない」と言っている人でも何かしらやりたいことは絶対あると思うんです。例えば食べることが好きなら「食べることで稼げる仕事ってなんだろう」って考える思考を持ってみるとか。興味の対象に対していかに自分からアクションを起こせるかだと思います。
1998年11月15日高知県生まれ。お茶の水女子大学卒業。
株式会社keypoint代表取締役社長。
メンズアイドル「Animal☆Collection」、「Repalette」プロデューサー。
お茶の水女子大学在学中にアイドルプロデュースを経験し、芸能事務所LVSアイドル事業部の部長になる。2022年1月にメンズアイドルグループ「Animal☆Collection」、「Repalette」をデビューさせ、大学卒業後、アイドルに特化した芸能事務所である株式会社keypointを設立。
インタビュー・記事:竹井 裕香