2023.03.20
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最近TikTokを中心にSNSで目にすることの多いトレンドの中に、「レイヴ」や「スピークイージー」というものがある。
なぜ、若年層の間でトレンドになっているのか、匿名コンテンツにハマる理由などをを紹介する前に、
まずは2つの概要から述べていく。
「レイヴ」とは、ロンドンがその発祥で、サイケデリックなクラブミュージックを山の中で流し人々が音に合わせて
盛り上がるイベントのことだが、注目すべきは検索しても開催場所や詳細が分からないということである。
音楽イベントのように多くの人に告知されているものではなく、人伝いで開催情報を入手しなければ参加できない。
また、似たような事例として「スピークイージー」をテーマにしたコンセプトショップも登場している。
「スピークイージー」とは、アメリカで禁酒法が制定された時代に流行したアルコール飲料を密売する場所のこと。
その多くは、外見上は見世物小屋などで合言葉を伝えることで中へ入れる場所が多かった。
最近、この「スピークイージー」をコンセプトに、合言葉やスマートフォンの操作でスタッフに裏へと案内されると
カフェ/バーに入れるお店が中高生の間でも人気になっている。
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なぜ、匿名コンテンツ(=正体を明かさないコンテンツ)
が人気になっているのだろうか?
☆ 情報過多の社会で「隠された情報」は価値が高い
物心ついたときからスマートフォンが身近にあり、圧倒的情報過多な社会で生きる若者にとって、
何かわからないことは検索エンジンやSNSを使えばあっという間に答えが出てくるのが当たり前。
だからこそ、答えとなる情報(レイヴなら開催情報、スピークイージーなら合言葉)があるはずなのに
検索しても出て来ないということが稀有で魅力的に映るのではないだろうか。
それは、ただ単に情報量が少ない、欠けているということではなく、“そこで楽しんでいる人がいる”
ということは分かっているにもかかわらず、情報があえて「隠されている」ということが、
能動的に情報収集するトリガーになっていると考える。
☆ そこでしか得られない特別感があるからこそシェアが加速
また、レイヴやスピークイージーが流行した背景として、そのコンテンツを享受している様子だけは
SNSで拡散されたということが要因の一つとして考えられる。
情報収集に成功した人だけが参加できるコンテンツ自体に特別感や高揚感が無ければ、
情報収集にかけたコストと見合わないと判断される上に、若者のシェア意欲も湧かなかっただろう。
時間や手間をかけて手に入った内容が、人に知らせたくなる/自慢したくなるものだからこそ、
拡散され、それがまた新たなループを生み、流行がつくられたのだと推察される。
☆ 個性を大事にする若者だからこそ匿名コンテンツは今後も流行するのではないか
脱ゆとり教育を受け、個性を大事にしてきた今の若者たち。「他の人と違う体験ができる」ということも
行動選択の重視点だとすると、こうした匿名コンテンツは今後も流行する1つの型と言えるのではないか。
それは、情報入手難易度が高く「自分だけが得られる特別な体験」という意味では、
企業やブランドのマーケティング活動に活かせるポイントとも考える。
今後も、このような匿名コンテンツの動向に注目していきたい。
記事:福嶌 咲美(電通ワカモン研究員)