【YOUTHClip CINEMA GUIDE vol.18】今週の映画セレクション/『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
毎週月曜日にお届けする連載企画【YOUTHClip CINEMA GUIDE】今週の映画セレクション。
本コーナーでは、現役大学生で構成されたYOUTHClip編集部員が、“今観てほしい”おすすめの映画をセレクトし、その魅力をご紹介します。
今回取り上げるのは、2003年に福岡市で起きた「教師による児童いじめ事件」の冤罪劇を描いた福田ますみのノンフィクション小説、およびそれを原作とする『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』。
目次
1.キャストスタッフ&ストーリー
2.極上の演技が狂わせる
3.なにが真実で、なにが嘘なのか
1.キャストスタッフ&ストーリー

主演:綾野剛 柴咲コウ
亀梨和也/大倉孝二 小澤征悦 髙嶋政宏 迫田孝也
木村文乃 光石研 北村一輝 小林薫
監督:三池崇史
原作:福田ますみ
企画・プロデュース:和佐野健一
脚本:森ハヤシ
配給:東映
©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会
◇ストーリー
2003年、小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)は、保護者・氷室律子(柴咲コウ)に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。これを嗅ぎつけた週刊春報の記者・鳴海三千彦(亀梨和也)が”実名報道”に踏み切る。過激な言葉で飾られた記事は、瞬く間に世の中を震撼させ、薮下はマスコミの標的となった。誹謗中傷、裏切り、停職、壊れていく日常。次から次へと底なしの絶望が薮下をすり潰していく。
一方、律子を擁護する声は多く、”550人もの大弁護団”が結成され、前代未聞の民事訴訟へと発展。誰もが律子側の勝利を切望し、確信していたのだが、法廷で薮下の口から語られたのは「すべて事実無根の”でっちあげ”」だという完全否認だった。
2.極上の演技が狂わせる
本作の最大の魅力は、実力派の豪華キャスト陣で描かれていることです。観客も当事者かのように感情移入させられてしまいます。ホラー映画だと評されるほど、綾野剛演じる・薮下誠一と、柴咲コウ演じる・氷室律子の最恐でサイコパスな演技がとても印象に残ります。特に、薮下誠一(綾野剛)の“演じ分け”には鳥肌が立ちます。物語が薮下の「主観」で描かれているときと「客観」で描かれているときで、全く異なる薮下の印象を突きつけられ、観ているものを信じられなくなるほどです。そこに重なる氷室律子(柴咲コウ)の圧倒的な演技の凄みが、作品の緊張感を極限まで跳ね上げます。
3.なにが真実で、なにが嘘なのか
薮下の主観的な視点と、客観的な視点の双方から描かれる本作は、薮下という人間の印象が180度異なって映し出されます。自分が観ているものは「悲劇の主人公」なのか、それとも「恐ろしい怪物」なのか。視点が変わるたびに信じていた前提が次々と覆り、観客は「一体どちらが本当の姿なのか」と、底なしの疑心暗鬼に陥っていくことになります。“真実に基づく、真実を疑う物語”をぜひ体感してみてください。
4.だからZ世代に届けたい
SNSが生活の一部となり、あらゆる情報が瞬時に拡散される現代。デジタルネイティブであるZ世代にこそ、本作を届けたい理由があります。タイムラインを開けば、真偽のわからないニュースや嘘があふれ、瞬く間に「多数派の意見」が作られていく今の時代。しかし、多くの人が「正しい」と騒いでいることや、画面越しに見えているものだけが、本当に真実とは限りません。
本作は、私たちが日頃どれほど流れてくる情報を鵜呑みにし、誰かが作った空気感に流されているかを、痛烈に突きつけてきます。多数派の声に惑わされず、一歩立ち止まって「その裏にある本質は何か」を自分の頭で疑い、考えること。情報過多な社会を生き抜く私たちに、本当に必要な視点を教えてくれる作品です。ネットの海に溺れがちな今だからこそ、一度は観てほしいです。
Tel:03-6712-5946
記事:西村衣湖