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「あの花」ブーム到来で興行収入40億円超え!「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」はなぜ流行った?

2024.02.20

      

2023年12月8日に公開された映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」

公開から2ヵ月経った現在、興行収入は40億円を超え、イベント開催は異例の27回!

まだまだロングラン上映中の大人気作品となりました。

とくに若い世代を中心に流行した印象の強い本作ですが、いったいなぜ若者の心を掴んだのでしょうか。多くの戦争映画が生まれている中で、本作が大ヒットした理由について考察していきます。

愛される原作

 

Amazon.co.jp: あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 (スターツ出版文庫) : 汐見夏衛: 本

2016年にターツ出版文庫より発売された「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」

2023年には「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」が実写映画化され、若い世代から強い人気を誇る汐見夏衛さんのデビュー作であり、「とにかく泣ける小説」とSNSで話題に。

実写化に伴いさらに注目され、現在シリーズ累計発行部数は100万部を突破。

 

汐見夏衛さんは、子供の頃に訪れた「知覧特攻平和会館」で強い衝撃を受けたのと同時に、『他人によって命を奪われることの不条理』を感じたそうです。自身の感じた不条理に対する思いを代弁してくれる存在として、主人公の百合という少女を作りあげたとお話されています。

 

たしかに百合のセリフには、きれいごとではない意見と素直な欲望が溢れていて、どこか自分と重なるような部分もありました。多くの人に愛されている小説ですが、原作ファンから「想像していた百合と彰だった」「実写化反対派だったけどこの作品はよかった」など、実写映画を認めるような発言が多く見られたことも印象的でした。

2020年には百合のその後を描いた続編の「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」が発売され、映画を鑑賞して「あの花ロス」になった人が購読し、また涙するといった一連の流れができています。

 

記憶に残るキャッチコピーと言葉

 

「初めて愛した人は、特攻隊員でした」

誰もが特別な感情を持つ初恋の相手が、死を意味する特攻隊員であるという切なさ溢れる本作のキャッチコピー

このキャッチコピーはテレビCMで放送される予告の冒頭で使用されています。何気なくテレビを見ていた人や耳にした人の興味を引き付け、かつ切ないがゆえに心に残りやすいことが観客の動員に繋がったのではないでしょうか。

 

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そして、多くの観客が涙した主人公ではない2人の密かな恋物語。

百合の友達の千代ちゃんと、彰と同じ特攻隊員の石丸さん。この2人の恋物語が1番泣いたという人が続出し、また石丸さんが千代ちゃんに残した手紙も話題となっています。

 

いつも明るくて皆に元気を与えてくれる石丸さんへ密かに恋心を寄せていた千代ちゃん。この部分だけを見ていたら現代でもよくある可愛らしい恋愛ですが、「もうすぐ死にに行く」という変わることのない事実が2人の未来を閉ざします。生まれ変わったら千代ちゃんをお嫁さんにすると話していた場面から石丸さんが千代ちゃんを想っていたことも明確で、両想いという本来幸せであることが苦しいこの時代の壮絶さを思い知らされました。自分の命が尽きることを知っている石丸さんが、来世はお嫁さんにと願った大切な千代ちゃんに遺した精いっぱいの5文字「君に幸あれ」。たった5文字でありながらも、千代ちゃんに対する石丸さんの想いがすべて込められていると読み取ることができます。その言葉を受けて、「私は幸せにならなくてはならない。」と、強く生きることを決心する千代ちゃんのその後も小説で描かれています。

 

以前YOUTHClipで掲載した「現代の若者に響く言葉」という記事では、話題になる本や映画の特徴のひとつとして”言葉”が重要視されている傾向があり、キャッチコピーやその作品を象徴するような名言が若者の間で流行することが頻繁にある、と述べています。「初めて愛した人は、特攻隊員でした」「君に幸あれ」といった、簡潔でありながらも深い意味を持つ言葉が心に響く若者が続出したと推測できます。

 

現代人の心を代弁してくれる百合という存在

 

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現代の高校生・百合が戦時中の日本にタイムスリップするところから始まり、彰やツルさんなど当時を生きる人々と出会うことで物語が展開していきます。本作のテーマは特攻隊。片道分だけの燃料を積んだ飛行機に乗り、自らの身を投じて敵地に攻撃をする部隊に対して、「そんなことしても意味がない」「彰一人が行かなくてもなにも変わらないから逃げよう」と訴える百合はまさに観客の代弁者だと感じました。特攻隊員として国に命を捧げるのは誇らしいことという認識であった当時と、平和で安全な毎日を過ごしている現代人の価値観に差が生まれるのは当然のことです。この感覚のズレを百合が真正面から訴えてくれることで、現実だと想像しがたい展開に置いていかれることなく、より物語に入り込むことができます。

 

本作のために書き下ろされた主題歌

 

本作のために福山雅治さんによって書き下ろされた主題歌「想望」

YouTubeでは660万回再生を記録し、第74回NHK紅白歌合戦では白組のトリとして披露。

 

この曲は彰目線で書かれており、「泣かないで 君よ幸せであれ」「止めないで 僕が選んだこの道 これでよかったと いつかねぇ思って」など本編で描き切らなかった彰の心情を補足するような部分もありました。 本編で枯れるほど涙したのちに流れるエンドロールでの「想望」で、また涙が止まらなくなる人が続出しました。劇場内にはすすり泣く音が絶えず、実際エンドロールが終わった後も観客の皆さんがなかなか立ち上がれなくなってしまうほど、余韻を持たせる作品、主題歌でした。普段福山雅治さんの曲をあまり聴くことがないという若い世代の間でも流行し、カラオケで歌う動画や「想望」を用いた歌詞動画がTikTokで多く投稿されました。

 

キャスト、スタッフさんの作品愛

 

YOUTHClipでは福原遥さん、伊藤健太郎さんへの個人取材や、イベントの取材などをさせていただいていますが、どの現場でもキャスト、スタッフさんの本作への愛を感じる場面が多くありました。完成披露試写会では、百合と彰が大切な時を過ごした百合の丘をイメージして、百合の生花400本がステージに並べられました。会場を訪れた観客を百合の香りが包み込み、さらに上演後にはその百合の生花が観客1人1人に配られるというサプライズも。丁寧に包まれた百合には、福原遥さん水上恒司さんからの手書きメッセージカードも添えられ、「あの花」チームのおもてなし精神に圧倒されました。

そして異例の27回も行われているイベントに関して、今大人気で多忙なキャストさんがこの作品のためにスケジュールを抑えていることと、スタッフさんがイベントの企画・運営という重労働を何度もこなしていることからも作品愛がうかがえます。

その愛が観た人の心にも届いたことが、本作大ヒットの理由の1つであると推測しています。

 

初日舞台挨拶記事はこちらから

福原遥さん取材記事はこちらから

伊藤健太郎さん取材記事はこちらから

まとめ

 

映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」が大ヒット作品となった理由を、観客の1人として、そして「あの花」の裏側を見てきた者として、考察させていただきました。

恋心といういつの時代にも存在する感情を通して、人と人との繋がりや戦争の悲惨さを描いていることで、現在の若者の心にも響きやすい作品であったのではないでしょうか。そして、汐見夏衛さんから生まれ、出版社や実写化に伴うキャスト、スタッフさんなどたくさんの人の愛が込められ大事にされてきた作品だからこそ、その愛が観た人の心へまっすぐに届いたのだということが分かりました。

 

Tel:03-6712-5946

 

記事:根市涼花

 

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